導入事例

トノハタの業態 ~ 和歌山の梅干し加工会社

-- トノハタの業態について教えてください。

ギフト商品、最高級 紀州 南高梅 トノハタは、和歌山の梅干し専門の食品加工会社です。日本の梅干しの大半は、ここ和歌山で作っておりまして、だから梅干しの会社もたくさんあります。トノハタもその中の一社です。創業は昭和25年。2006年度の年商は22億円でした。私が社長になった1996年の年商は9億円でした。お陰様で10年で規模を二倍以上にすることができました。

梅干し流通の3つのパターン

-- 今日は、「食品加工業という業態における、営業プロセスマネジメントの重要性」について詳しくお聞きしたいと思います。

まず、トノハタが作った梅干しは、どのような流通を経て、消費者に届くのかを教えてください。

一般の人が梅干しをどこで買うか。基本的にはスーパーやデパ地下だと思います。そうした売り場に梅干しを供給しているのは、食品問屋のみなさんです。トノハタの一番のお得意様も、こうした問屋の皆様です。ここから売上げの7割が出ます。

また、コンビニでおにぎりやお弁当を買えば、そこには梅干しが載っています。そうしたおにぎりやお弁当を作っている食品加工会社は、どこかから梅干しを仕入れなければなりません。その「どこか」が僕らのような梅干しの会社です。このお弁当屋さん、おにぎり屋さん向けの売上げが全体の1割。

今、お話しした二つの例は、どちらも、自分で買って自分で食べる、「自家需要」の話です。梅干しには、もうひとつ、「自分で買って、人に贈る」という、「贈答品」の市場があります。贈答品としての梅干しは、百貨店の通販事業部や大手通販会社などが出している分厚いカタログに載って、そこから売れていきます。そうした通販関係の皆様に卸している売上げ、これが全体の2割です。

なお、売上げの7割を占める食品問屋向けの売上げの、そのまた内訳ですが、大半が、漬け物専門の食品問屋向けの売上げです。

漬け物専業ベンダーには、高度な知識と調達力が必要

-- 「漬け物専門の食品問屋」とはどのような業態ですか。

普通の食品問屋は、物流や在庫に強みがある、いわゆる「卸業」です。一方、漬け物専門の食品問屋は、スーパーの漬け物売り場のトータルプロデュースを行う会社であり、「流通力+企画力」が強みです。我々は、こうした皆様を「漬け物専業ベンダー」とお呼びしています。

漬け物ベンダーの中には、漬け物の製造も一緒に行っている会社も多くあります。自社で浅漬けを製造しながら、一方で、トノハタのような梅干し屋から梅干しを、他社からキムチやらっきょう、たくあんを仕入れるようなイメージです。

そうして漬け物売り場を、消費者の購買意欲をそそるよう、カラフルにコーディネートするのです。

漬け物ベンダーのお客様は、スーパーやコンビニです。こうした量販店の場合、本部が売り場の棚構成を決めて、それが各店にコピーされていくのが普通です。漬け物ベンダーの皆様は、最初は企画会社として、スーパーやコンビニに棚割の提案をします。その案が採用されたら、次は卸会社として、漬け物商品を売り場に安定供給します。

漬け物の場合、相手が野菜ですから、鮮度が命です。特に浅漬けなどは、素材の味が前に出ます。そして浅漬けの材料は、白菜一つ取っても、季節を追うごとに、旬の産地が、北から南へと、移動していきます。そこで必要になるのは、今この時期ならこの産地の方が美味いと知っている「情報力」。そして、その情報を元に、旬の素材を確保する、「調達力」。専業ならではの知識と実力、プロフェッショナリズムが要求される世界です。

梅干し営業は、ルート営業が基本 ~ 派手なことは、なし

-- トノハタは、それら漬け物ベンダーに、どんなスタイルの営業をしているのですか。

卸会社への営業なので、ルート営業が基本スタイルです。

ルート営業の特徴として、「見込み客発掘」や「集客」などのステップは特に重要ではありません。梅干し屋のルート営業の場合、行き先は、昔から決まっています。リストも全部分かっています。後はそこにどう売り込むかです。

しかし、売り込みといっても、別に特別なことはしません。取引実績がないベンダーさんには、まず電話を入れて、何とか面会のお時間を取っていただき、出かけてご挨拶して、会社の説明をして、何とかお取引いただけるよう努力する。普通の営業を、まじめに行います。

漬け物の営業の場合、いかに長くお付き合いいただけるかが勝負です。何か大きな物件をバーンとプレゼンして、一発で巨額の売上げを上げるような、そういう派手なビジネスとはちがいます。真面目、誠実、正直がだいじです。ウソやごまかしは絶対にだめです。

漬け物専業ベンダーにはどのタイミングで営業を行うか

-- 漬け物ベンダーへの営業は、どういうタイミングで行うのですか。

売り場の模様替えの時期を見計らって、営業します。スーパーの漬け物売り場は年に二回網用替えします。4月~9月の春夏バージョンと、10月~3月の秋冬バージョンの2パターンです。各バージョンの期間中は、細かい変動はあっても、売り場の基本構成や定番商品は同じです。

この定番商品の中に、いかにトノハタの梅干しを入れ込めるかが、我々の営業の勝負どころです。まずはベンダーの皆様のところに足繁く通ってトノハタを売り込みます。その次は、漬け物ベンダーの皆様と協同して、今度は、スーパーのバイヤーに売り場の提案するような動きも必要になります。

-- スーパーのバイヤーには、どういう営業をすれば良いのですか。

バイヤーの方の個性が一人一人ちがうので一概には言えません。言えることは、バイヤーの皆様はとにかく忙しいと言うことです。ですから各バイヤーの性格を把握して、相手の邪魔にならぬよう営業することが重要です。

あるバイヤーの方は、売り手の情熱重視、頻繁に商談する売り手を良く思います。この場合は、とにかく通うことが重要です。またあるバイヤーは、情報は嬉しいけれど、時間のかかる付き合いはお断りという場合もあります。こういう方とは商談はめったにしません。基本的にはメールやFAXでの情報提供が主な営業です。

殿畑社長が考える「ルート営業でいちばん大事なこと」

-- 殿畑社長が考える「ルート営業でいちばん大事なこと」は何ですか。

「相手に好かれること」。これが、いちばん大事です。

-- 相手に好かれていなくても、価格や商品企画で相手のメリットになる提案をすれば、成約が取れるのでは。

ちょっと考えると、そんな気もしますが、実際にはそうはなりません。嫌いな営業マンから安値の提案を受けたら、どうするか。そのバイヤーに、自分が好きな別の営業マンを呼ばれて、「あそこ、こんな値段でもってきよったで。あんたんとこで、(この値段の)下くぐれや」とか言われるのが、関の山です。すごい新商品を持っていっても同じこと。「あそこ、こんなん作るらしいで。あんたんとこでも同じの作れや」とでも言われるでしょう。

ルート営業では、売る側も買う側も「長い付き合い」になるのが基本です。嫌いなヤツと長く付き合いたい人間はいません。だから、ルート営業でいちばん重要なことは、「相手に好かれること」。私の変わらぬ信念です。

「営業管理とものづくり管理は同じ」と言われて、ピンと来る

-- 殿畑社長がeセールスマネージャーの導入を検討するようになったきっかけは何ですか。

200*年頃、会社の年商も何とか伸びてきました。でも内心では、営業部が、このままの体制で、会社の図体だけ膨張したら、きっと破綻するやろなとビビってました。

だけど、何をどう変えればいいのかはさっぱり分かりませんでした。今の営業部は、直感的におかしいと思う。じゃあ、具体的にどこがおかしいのか、どこをいじくれば良くなるのかと自分に問い返しても、ハッキリ分からないモヤモヤした状態。

そんな時期に、宋さんの「やっぱり変だよ、日本の営業」を読みました。営業マネジメントが製造業に例えて書いてあって、何かピンと来るものがありました。

私は、梅干し屋さんですから、製造管理や品質管理なら得意技です。あ、そうか、営業管理もものづくりと同じ感覚でやればいいのかと妙に納得し、ヨシこれでいこうと心を決めて、さっそくeセールスマネージャーを導入しました。

eセールスマネージャーの導入前と後とで変化したこと

-- eセールスマネージャーの導入前と後とで変化したことは何ですか。

表面上は、変わったことはありません。ルート営業のプロセスというのは、eセールスマネージャーがあろうがなかろうが、そうそう変わる物ではありません。「調査 → ヒアリング → 考察 → 提案 → クロージング → フォロー」という、この手順はいっしょです。

しかし、プロセスマネジメントを導入したことで、各プロセスの進捗度合いや、注力度合いが定量的に見えるようになってきた。そうすると、経営者であるわたし自身が、今、どのプロセスを大切に思っているのかが分かる。営業プロセスのデータに対する「お、良い調子」とか「まずいなあ」という自分の心の動き、反応。これを観察することで、おのずと自分の考えが整理されてきました

昔は悩んでいるばっかり、堂々めぐりばっかりで、営業が、具体的に「進化」しませんでした。しかし、eセールスマネージャーが入ったことで、「進化」の道筋や道標が見えてきた。どっちの道に行けばいいのかがわかってきました。

今、だいじに思っているのは、「ヒアリングと提案」のプロセス。指標で重要視しているのは訪問回数。「何べん足、運んでんねん」が指標です。来年の今頃はまた別の考えを持っているかもしれませんが。

梅干しの営業において、営業マンが気をつけなければならないこと

-- 梅干しの営業において、営業マンが気をつけなければならないことは何ですか。

営業マンには、「梅干しを売るな。梅干しの価値を売れ」といつも言っています。

やっちゃいけないのは、「この梅干しは塩分が3%で、素材はどこそこ産の梅を使っていて」と、特性を一方的にアナウンスするような営業です。それをやると嫌われる。少なくとも好かれはしない。それはルート営業にとっては最悪。

そうではなく、商品の持っている価値(感動)を伝える。例えば「この梅干し、塩分3%ですよ。すごいと思いません。塩分6%だと一個しか食べられないのが、3%だったら、摂取塩分が同じだから2個食べられます。この梅干しを毎日食べてもらえれば、こんな良いこと、あんな良いことが、つぎつぎ舞い込んできます」と語りこむような、そういう感動というか、心のゆさぶりを、仕入担当に伝える。そうして仕入担当にも「そら、すごいなあ」と共感してもらって、「そんないい梅干しなら、次の棚割のときに並べてみよか」と行きたい。そういう営業がしたいです。

そもそも、梅干しという商品自体が、コモディティ商品、日用品なので、価値を伝える努力をしないとジリ貧になります。梅干しのような日用買い回り品は、価値を伝える努力をしないとジリ貧になる

梅干しのような日用買い回り品は、価値を伝える努力をしないとジリ貧になる

-- 「コモディティ商品、日用品なので、価値を伝える努力をしないとジリ貧になる」とは、具体的には。

食品の場合、三陸海岸のウニとか北海道のカニとかがスペシャリティ商品です。一方、梅干しなど大多数はコモディティ商品です。

日用品の営業の場合、価格で勝負か、価値で勝負か、どちらかです。価格で勝負する場合は「味はいっしょです。でもこっちの方が安いです」とアピールします。価値で勝負する場合は、「値段はいっしょです。でもこっちの方がおいしいです。楽しいです。体にいいです」とアピールします。僕は、自分の作っている梅干しが好きなので、価値をアピールしたいです。

さて、ここでもやはり「好かれることが重要」という話に戻ります。嫌いなヤツに「これ、いいでしょ」と言われて納得する人はふつういないですから。

営業マンというと、口八丁、手八丁のイメージがあります。でも、梅干し屋の営業にそれは必要ない。だいじなのは、正直であること、礼儀を重んじる、信用を第一とすることです。このことをみんなに徹底するために、最近、トノハタ営業5箇条など作って、社内で配布しています。

1. トノハタの営業とは、サービス業(お客様奉仕)である。
2. トノハタの営業とは、顧客との間に信頼を構築することである。
3. トノハタの営業とは、顧客と会社のパイプ(道)である。
4. トノハタの営業とは、顧客に感動を伝えることである。
5. トノハタの営業とは、顧客の要望を聞き取ることである。

営業の効率管理だけでなく"品質管理"もeセールスマネージャーで 出来ないものか

-- 今後、eセールスマネージャーを使ってやっていきたいことは何ですか。

これを使って、何とか営業の品質管理ができないかなと、今、一生懸命、考えています。営業のプロセス化の場合、普通は効率管理が先に来る。時間を有効に使おう。一日何軒まわってるんや、それで成約率はどうなんやとか、そういう話です。

僕が考える営業の品質管理というのは、つまり「その営業マンが相手にどれだけ好かれているか」を、定量化するような動きです。バイヤーにも色々な性格の人がいますが、どんな相手に対しても、この手順で動けば、まあまあ好かれるというような、そういうプロセス化ができないものかと。

今、会社が伸びているのは親父のおかげ

-- 殿畑社長が入社する前、トノハタの年商は約3億でした。それから約20年で年商は22億。実に7倍になりました。急成長の要因は何ですか。

親父が基盤を作ってくれたおかげです。

親父は、終戦後、持っていた田畑(でんぱた)や金融資産をすっかり無くしました。ゼロというよりはマイナスからのスタートで、そこから這い上がるために、梅干し屋を始めたのです。たぶん親父にとっては、梅干しというのは、ひとつの「商売」、もっと露骨に言えば、「金儲けの手段としての商い」だったはずです。

「儲けの手段としての商い」というといかにも人聞きが悪い。しかし、戦争でスッカラカンになった親父にしてみれば、「梅干しでもって、何とか子孫のための基盤をつくろう。会社をデカくするよりは、基礎をがっちり固めよう」という気持ちがあったと思います。

そうして親父が作った基礎の上に乗っかって、プラスのスタートが切れた僕は、商売人としては本当にラッキーでした。年商が伸びたのは、親父が作った基礎があったからこそです。感謝ですね。

eセールスマネージャーはどんな業界に向いているか

-- eセールスマネージャーはどんな業界、分野に向いていると思いますか。

どこでも大丈夫なんじゃないでしょうか。食品営業、ルート営業でも全く問題なし。ちゃんと使えています。

ソフトブレーン・サービスへの今後の期待

-- ソフトブレーン・サービスへの今後の期待をお聞かせください。

何回も言って恐縮ですけど、「営業マンがどうやってお客に好かれるか」。これのプロセス化というか、ノウハウ化を、僕も一生懸命考えますので、ソフトブレーン・サービスさんも考えてください。共同開発しましょう。

もう一つは、Webマーケティング。今はトノハタの良さを、営業マンが口で、バイヤーさんに伝えています。これをWebでも伝えることはできないか、Webをファン化のツールにできないかと、そういうことを模索しています。

今後もeセールスマネージャーをしっかり使い倒して、「梅干し界の究極のルート営業を実現したるで!」という気概でおります。ソフトブレーン・サービスの皆様にも、今後も何卒のご協力、お 付き合いをお願いいたします。

お忙しい中、有り難うございました。